
不動産投資における良いバランスシートと悪いバランスシート
貸借対照表とも呼ばれるバランスシートは損益計算書、キャッシュフロー計算書とともに財務諸表の主要な書類を構成しています。不動産投資においては損益計算書やキャッシュフロー計算書に重きが置かれ、バランスシートは後回しの傾向です。ですが、バランスシートは期末時点の資産状態を示す重要な書類。今回はその見方やよいバランスシートと悪いバランスシートについて考えていきます。
バランスシートの構成
バランスシートは左側の部分を借方、右側を貸方といい、両方の数字が必ず一致するようにできています。このため、「バランス」シートと呼ぶのです。借方には資産、貸方には負債と資本が入ります。この資産、負債、資本の割合やバランス、そこに現れる勘定科目によってよいバランスシートと悪いバランスシートを見分けるのです。
バランスシートの見分け方1:負債のバランス
ふたつのバランスシートを用意しました。
【バランスシート1】
現金 |
500万円 |
借入金 |
1,800万円 |
土地 |
3,000万円 |
自己資本 |
4,200万円 |
建物 |
2,500万円 |
||
6,000万円 |
6,000万円 |
【バランスシート2】
現金 |
500万円 |
借入金 |
5,400万円 |
土地 |
3,000万円 |
自己資本 |
600万円 |
建物 |
2,500万円 |
||
6,000万円 |
6,000万円 |
ふたつのバランスシートは左側借方の資産が同額となっています。異なっているのは、右側貸方の負債と自己資本の割合です。バランスシート1は自己資本の比率が70%、バランスシート2は10%になっています。このようなバランスシートを持って融資の申し込みに来たふたりの投資家がいたとしましょう。金融機関はどちらを優先して融資するか明白です。それはバランスシート1の投資家に対してまず融資を行い、バランスシート2の投資家は他の条件によっては融資をしません。バランスシート2は自己資本が低くなっています。フルローンやオーバーローンもあるため、自己資本の比率が低いこと自体が問題というわけではありません。ただ、追加の融資を受けようとする場合には、自己資本の低さがネックとなる場合があります。
バランスシートの見分け方2:未収収益の割合
次のバランスシートをみてみましょう。
【バランスシート3】
現金 |
900万円 |
借入金 |
5,000万円 |
土地 |
4,000万円 |
自己資本 |
3,000万円 |
建物 |
3,000万円 |
||
未収賃料 |
100万円 |
||
8,000万円 |
8,000万円 |
【バランスシート4】
現金 |
100万円 |
借入金 |
5,000万円 |
土地 |
4,000万円 |
自己資本 |
3,000万円 |
建物 |
3,000万円 |
||
未収賃料 |
900万円 |
||
8,000万円 |
8,000万円 |
ふたつのバランスシートは右側の負債と資本は同額です。左側の資産合計も同じ金額になっています。異なるのは現金と未収収益である未収賃料の金額です。バランスシート3は現金が900万円、バランスシート4は100万円となっています。そして未収賃料は逆にバランスシート4のほうが多額です。総資産額は8,000万円と同額なのに、財務内容は大きく異なっています。この場合、バランスシート3はよいバランスシート、バランスシート4は悪いバランスシートです。未収収益である未収賃料は資産ではありますが請求権に過ぎず、実質を伴っていません。バランスシート4は貸し倒れの危険性もあります。場合によっては資金ショートで黒字倒産の可能性すらあるのです。
バランスシートは複数年で見よう
バランスシートは1年分だけ見ても、十分ではありません。金融機関でも融資にあたって複数年の財務諸表を要求してきます。それは複数年の財務諸表を比較して初めてその不動産投資の全容がわかるからです。資産がどれだけ増減し、負債がどれだけ増減したか。それを見るだけでも、その不動産投資がよい方向に向かっているのか、厳しい方向になっているのかがわかってきます。できれば3年程度のバランスシートなどの財務諸表を比較して検討するようにしましょう。
まとめ
バランスシートなんて決算の時しか見ない、という投資家も多いもの。確かにバランスシートを眺めていても、利回りが向上するわけではありません。ただ、金融機関がバランスシートのどのような点に着目するか、自分のバランスシートがどんな印象に見えるかは知っておいたほうがよいでしょう。よいバランスシートを目指して頑張りましょう。