
不動産投資における財務知識の重要性
不動産投資には財務知識が不可欠です。少し前には「不動産金融工学」なる言葉ももてはやされました。金融の専門知識を不動産と融合させようとしたのです。そこまで行かずとも、不動産の取得から運営、物件の売却に至るまでどの段階でも財務知識は必要なもの。ここでは財務知識が不動産投資に必要な局面とその理由について考えていきます。
目次
物件購入時の検討のため
例えばこんな物件があったとします。
【購入検討物件の一例】
物件価格 |
5,000万円 |
粗利回り |
8% |
自己資本 |
1,000万円 |
融資可能額 |
4,000万円 |
満室時収益 |
400万円 |
減価償却費 |
150万円 |
減価償却費以外の費用 |
150万円 |
純収益 |
100万円 |
これを買うべきか、見送るべきか、判断する必要があります。もちろん、立地条件やその時の経済情勢などで判断が変わることはあるものの、こうした財務情報から購入を判断することが必要です。
金融機関とのやり取りのため
金融機関はいわば財務のプロフェッショナルです。そんなプロとのやり取りに財務知識がない状態で臨むのは、話し合う前から負けていることになります。同じ土俵に乗らないと平等な話ができないのです。融資審査をパスする、より有利な融資条件を勝ち取るには財務の知識が欠かせません。
決算のため、税理士とのやり取りのため
法人であれ、個人事業主であれ、決算は原則1年に一度やってきます。自分で専用ソフトを使って決算書類を作成するにはもちろん財務知識が必要ななことは言うまでもありません。仮に税理士に依頼してやってもらうとしても丸投げは危険です。税理士からの報告を聞き、その後の方針を決定するためには財務知識は必須となります。
納税のため、節税のため
不動産投資に限らず、投資には納税がついて回ります。不動産投資の場合は、固定資産税や所得税、法人税などです。適正な納税のためには適正な財務知識が必要になります。節税のためにはなおさらです。収益を最大化し、費用を最小化するためにはキャッシュフローや減価償却の知識が必要となります。
リフォームをするかの判断のため
リフォームをどの時点で行うかは難しい投資判断のひとつです。リフォームをすることでどれくらいの費用がかかり、どの程度家賃が上昇するのか。これを予想するのが難しいからです。また、リフォームは内容によっては修繕費に含めるものと資本的支出に含めるものに分かれます。その時の財務状況も踏まえながら判断するのは高度な判断になるのです。
物件を持ち続けるか売却するか
不動産投資において出口戦略、つまり物件の売却はタイミングを図ることが難しい判断です。その物件からいくらのキャッシュフローが生み出されているか、残債は返済できるか、といったことを勘案する必要があります。キャッシュフローが生み出されている物件を無理に売却する必要はありません。逆に黒字でもキャッシュフローがマイナスなら売却検討対象になります。ここでもキャッシュフロー、減価償却、税金といった知識が必要です。
売却するならいくらでするか
売却価格を決定するには、多くの要因があります。もちろん、相場や利回りを無視して決定することはできません。ただ、減価償却が終わっていれば多少安くても損はしません。生み出したキャッシュフローと比較して検討することもできます。このように多角的に価格を検討するためにも財務知識が必要です。
どれくらいの財務知識が必要か
これまで財務知識の必要性についてお話ししてきました。ではどれくらいの水準が必要になるかを考えていきます。もちろん、公認会計士や税理士ほどの知識は必要ありません。また、不動産投資は会社の経営よりも勘定科目や会計上のテクニックも少なくて済みます。こうして考えると、簿記の入門編である簿記3級程度の知識があれば十分です。簿記3級ならば知識がゼロでも数か月の勉強でも合格レベルに達することができます。
まとめ
物件購入の場面から、物件売却の局面まであらゆる局面で財務知識が必要だとわかりました。仮に物件の取得や売却をしなくても日々の帳簿付けや決算、納税で財務知識は欠かせません。不動産で必要な財務知識は簿記の入門レベルでも対処できるものです。財務知識はほんの少しの勉強で不動産投資にとても役立ちます。ぜひ勉強して不動産投資に活かしましょう。