
不動産投資での都心部と地方部の違いは?
同じ不動産投資でも場所によって投資環境は異なります。東京23区内のような都心部と、地方部では物件の価格、利回り、借り手の数などが大きく相違しているのです。これらの違いが投資活動にも影響を与えます。東京23区内の目線で地方部を見ることはできず、地方の常識は都心部では通用しないのです。ここでは都心部と地方部での不動産投資の違いについて見ていきます。
都心部の不動産投資の特徴
都心部には物件が多いイメージがあります。借り手も多く家賃も高水準です。それでは投資が成功しやすいかというと必ずしもそうではありません。都心部ならでは問題や課題もあるのです。都心部の不動産投資の特徴がどのようなものか、見ていきましょう。
賃貸需要が高い
以下は不動産情報サイト「アットホーム」(https://www.athome.co.jp/)の2020年10月時点で登録されている、投資用マンション及びアパートの件数です。
【表1 物件数】
東京23区内 |
1163棟 |
埼玉県 |
422棟 |
群馬県 |
131棟 |
やはり東京23区内が突出して多いことがわかります。投資物件の件数が多いということは、賃貸需要が高い証拠です。東京都心部の賃貸需要には、地方の県全体の投資物件でもかないません。
価格も高い
先ほどの投資物件を価格ごとに分けてみました。
【表2 価格ごとの物件数】
|
物件数 |
5千万円未満 |
5千万円以上 1億円未満 |
1億円以上 3億円未満 |
3億円以上 |
東京23区内 |
1163棟 |
116棟 |
328棟 |
565棟 |
154棟 |
10.0% |
28.2% |
48.6% |
13.2% |
||
埼玉県 |
422棟 |
163棟 |
142棟 |
103棟 |
14棟 |
38.6% |
33.6% |
24.4% |
3.3% |
||
群馬県 |
131棟 |
83棟 |
32棟 |
12棟 |
4棟 |
63.4% |
24.4% |
9.2% |
3.1% |
※端数処理の関係で100%にはなりません。
東京23区内の場合、6割前後が1億円以上の物件です。5千万円未満の物件は1割程度しかありません。この表を見るだけでも、東京23区内で物件を一棟購入するには、億単位の資金が必要だとわかります。
利回りが低い傾向
同じく、先ほどの物件を利回りでも区分してみました。
【表3 利回りごとの物件数】
|
物件数 |
5%未満 |
5%以上 10%未満 |
10%以上 15%未満 |
15%以上 |
東京23区内 |
1163棟 |
372棟 |
764棟 |
25棟 |
2棟 |
32.0% |
65.7% |
2.1% |
0.2% |
||
埼玉県 |
422棟 |
61棟 |
283棟 |
72棟 |
6棟 |
14.5% |
67.1% |
17.1% |
1.4% |
||
群馬県 |
131棟 |
22棟 |
47棟 |
54棟 |
8棟 |
16.8% |
35.9% |
41.2% |
6.1% |
※利回りは表面利回り。端数処理の関係で100%にはなりません。
利回りは東京23区内が低いことがわかります。3割が5%未満。物件の約97%、つまりほとんどが10%未満です。利回りだけを追求すると、東京23区内は低利回りで資金回収に時間がかかります。
競争率も高い
東京23区内には約970万人が住んでいます。これは他の道府県を超えるような人口です。人口は多いものの、それにつれて賃貸用物件も多く競争は激しくなっています。駅までの距離がわずかに異なるだけでも人気が変わり、家賃も変わってくるのです。借り手も多く、競争も激しいのが東京23区内の特徴といえます。
地方部の不動産投資の特徴
次は地方にも目を移してみましょう。投資環境は都心部とは大きく異なっています。物件を割安に入手でき、利回りも高めです。その一方で借り手が少ないため、空室のリスクは都心部よりも高くなります。都心部にはない、地方ならではの不動産投資の特徴について見ていきましょう。
物件を格安で手に入れることができる
先ほどの価格ごとの物件数を見てみましょう。
【表2 価格ごとの物件数】
|
物件数 |
5千万円未満 |
5千万円以上 1億円未満 |
1億円以上 3億円未満 |
3億円以上 |
東京23区内 |
1163棟 |
116棟 |
328棟 |
565棟 |
154棟 |
10.0% |
28.2% |
48.6% |
13.2% |
||
埼玉県 |
422棟 |
163棟 |
142棟 |
103棟 |
14棟 |
38.6% |
33.6% |
24.4% |
3.3% |
||
群馬県 |
131棟 |
83棟 |
32棟 |
12棟 |
4棟 |
63.4% |
24.4% |
9.2% |
3.1% |
地方へ行くほど価格が下がることがわかります。埼玉県では4割近く、群馬県では6割以上が5千万円未満で売り出し中です。東京23区内のような高額物件は多くありません。手ごろな投資金額から始められるのが地方の不動産投資なのです。
利回りも高め
利回りごとの物件数もおさらいします。
【表3 利回りごとの物件数】
|
物件数 |
5%未満 |
5%以上 10%未満 |
10%以上 15%未満 |
15%以上 |
東京23区内 |
1163棟 |
372棟 |
764棟 |
25棟 |
2棟 |
32.0% |
65.7% |
2.1% |
0.2% |
||
埼玉県 |
422棟 |
61棟 |
283棟 |
72棟 |
6棟 |
14.5% |
67.1% |
17.1% |
1.4% |
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群馬県 |
131棟 |
22棟 |
47棟 |
54棟 |
8棟 |
16.8% |
35.9% |
41.2% |
6.1% |
埼玉県や群馬県では利回り5%未満は少数派となっています。特に群馬県では10%以上15%未満がボリュームゾーンです。10%以上の物件は東京23区内ではほとんどありませんでした。こうしてみると、高利回り物件を得ようとすると、都心部よりも地方部のほうが探しやすいことがわかります。
エリア全体の賃貸需要が低い
価格が安くて利回りの高い物件が多いことは投資にとって有利です。ですが、地方部では賃貸需要が強いエリアは限られています。エリアによってはほとんど需要が見込めない場所もあるのです。高い利回りは空室リスクも反映しています。価格や利回りだけで購入することは早計で、慎重な物件選びが必要なのです。
まとめ
借り手も多い反面、激戦区の都心部。地方部は物件価格も割安な反面、賃貸需要が低くなっています。都心部と地方部では同じ不動産投資でも投資環境がかなり異なるのです。どちらに投資するか、あるいは両にらみで行くかは投資家の戦略次第になります。いずれもきちんと計画を立てて投資活動をすることが重要です。