
かぼちゃの馬車事件と不動産投資への影響
「かぼちゃの馬車事件」は近年の不動産業界で起こったもっともセンセーショナルな事件のひとつです。
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開していた不動産会社スマートデイズの破産により明らかになった事件ですが、事件の名前は知っていても詳しい内容を把握していない人も多いのではないでしょうか。
また不動産投資を検討している人は、これからの不動産投資市況を考えるうえで、この事件が与えた影響について理解しておくことが重要です。
本記事で事件の概要と不動産投資市況に与えた影響を解説しますので、ぜひ覚えておいてください。
かぼちゃの馬車事件とは?
かぼちゃの馬車事件とは、不動産会社のスマートデイズが展開していたシェアハウスのサブリース事業が破綻したことにより、物件オーナー(投資家)への賃料が未払いとなった事件です。
かぼちゃの馬車は、スマートデイズが手掛けていた女性専用のシェアハウスの名称で、「敷金・礼金・仲介手数料なし」に加え、家具完備、光熱費、インターネット代金は管理費込みという好条件を売りにして、東京都内の各地で事業を展開していました。
かぼちゃの馬車は、スマートデイズが物件オーナーから不動産を一括借りし、入居者に転貸することで収益を得るサブリース方式を取り入れていました。
サブリースは、オーナーと入居者との間で直接契約を取り交わさず、入退去の手続きや物件の管理業務などをすべて不動産会社に一任できるため、手数料は発生しますが、オーナー側がほとんど業務を携わることなく賃貸経営ができるメリットがあります。
かぼちゃの馬車においては、スマートデイズがオーナーから資金を募って「かぼちゃの馬車」を建設し、オーナーに販売するという手法を取っていました。
しかし、かぼちゃの馬車の家賃は決して割安ではなく、物件の質も悪かったため、入居率は想定を大きく下回り、2018年1月頃からオーナーへのサブリース賃料が滞るようになりました。
最終的にスマートデイズは民事再生法の適用を申請しましたが棄却され、2018年5月破産手続きに移行しました。
これにより、かぼちゃの馬車のオーナーはサブリース賃料を得られなくなり、また多くの人がスルガ銀行を利用して高金利のローンを組んでいたこともあり、自己破産する人まで現れる事態となりました。
不動産投資へ与えた影響
次にかぼちゃの馬車事件が不動産投資市況に対して与えた影響を解説します。
まず今回の報道によって「不動産投資は怖いもの」「騙される危険性がある」といった不動産投資に対する悪いイメージが世間に広まっていきました。
特に個人の投資家は、不動産投資に対し慎重な姿勢で臨むようになった人も多いでしょう。
また今回の事件においては、融資をしていたスルガ銀行が、かぼちゃの馬車の悪質なビジネスモデルを知っていながら、スマートデイズと結託し、不適切な融資を行っていたことが明らかになりました。
具体的には、かぼちゃの馬車の不動産としての価値を相場より高く見積もり、顧客の返済能力を考慮せず、さらに預金通帳の改ざん等を行い、不適切なプランのローンを組むことで融資実績を積み上げていました。
こうした実態が明らかになったことを受け、融資基準を厳しくする金融機関が増え始めました。
金融機関の融資基準が厳しくなり、物件の購入が難しくなると、不動産投資市況では以下のような影響が出ます。
・不動産価格が下落する可能性がある
・不動産会社から有益物件の情報を得にくくなる
・不動産投資市況が低調になる
実際に不正が明らかになる前と後の不動産投資市況の変化を見るため、2017年度以降の貸家の新設住宅着工数の推移を見てみましょう。
年度 |
貸家(戸) |
2017年度 |
419,397 |
2018年度 |
398,404 |
2019年度 |
342,289 |
2020年度(10月まで) |
255,879 |
※国土交通省「住宅着工統計」より
2018年4月にスマートデイズが経営破綻したことで、かぼちゃの馬車事件の全容が明らかになりましたが、実際に数字を見ても翌年の2019年度以降、貸家の新設住宅着工数が大きく減少しているのがわかります。
もちろん、これにはかぼちゃの馬車事件だけでなく、様々な社会情勢の影響があったことも事実ですが、原因の一部であったと考えて良いでしょう。
まとめ
かぼちゃの馬車事件の概要と、不動産投資への影響について解説してきました。
不動産投資市況に悪い影響を及ぼした事件でしたが、見方を変えれば一般の投資家が不動産投資に対する正しい知識を身につけるための、良いきっかけになったのではないかと思います。
かぼちゃの馬車事件では、スマートデイズによる「敷金・礼金・仲介手数料なし」という言葉に乗せられ、多くの不動産投資初心者が損失を被ってしまいました。
不動産投資を行う際は、目先の利益だけに惑わされず、将来を見据え慎重に行動することが大切です。