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不動産投資を安易に節税対策に使わない方がよい理由

不動産投資のメリットとして、節税となることがあげられます。相続税対策として郊外に多くのアパートが建築されてきました。不動産は節税になる、と喧伝しているサイトさえあります。確かにその主張は一面では正しいものの、不動産投資は安易に節税対策に使うべきではありません。今回はその理由についてお話しします。

 

理想的な節税とは

節税のポイントは減価償却費です。減価償却費は支出を伴わない費用。減価償却を除いた状態で黒字となっており、減価償却費を加味すると赤字になるとします。この状態だと財務上は赤字決算です。ですが、手元には減価償却費分のキャッシュが残っています。いわば「理想的な赤字」ともいえますが、これを狙って節税をすることは難しいもの。多くの節税対策の不動産投資は単に赤字を生み出している場合もあるのです。

【「理想的な赤字」の例】

①売上

2,000万円

②減価償却費を除いた費用

1,000万円

③営業利益 ①-②

1,000万円

④返済額

800万円

⑤減価償却費を除いた利益

 ③-④

200万円

⑥減価償却費

300万円

⑦最終利益 ⑤-⑥

▼100万円

 

不動産投資が節税対策に向かない理由とは

相続税を減らすことだけを目的とするならば、不動産投資は節税に向いているともいえます。ですが、そこはやはり投資活動です。黒字を出していかないことには不動産の経営は成り立ちません。ここでは、節税対策で安易に不動産投資を行った結果、起こりうる事態について考えていきます。

キャッシュフローの悪化

専業・副業に限らず、不動産投資を生業としている人や会社は利益の最大化を目指しています。ところが節税目的だと、不動産投資で利益が出てしまうとさらに税金がかかってしまうのです。このため、積極的に利益を向上させようとしません。利益の最大化という至上命題が揺らいでいることもあるのです。

不動産は分割できない

不動産投資で物件を購入してしまうと、そこ何千万円もの資産が固定されます。節税にはなるものの、今度は遺産分割がやりにくくなってしまうのです。他にも多くの資産があれば別ですが、相続人の誰が所有するのか問題となります。節税対策にはなっても相続対策にはならない場合があるのです。

物価や金利変動のリスクに弱くなる

不動産は物価や金利変動の影響を受けます。土地の価格は変動しますし、建物の価格は経年につれて下がっていくものです。経済状態や金利変動にも影響を受けます。特に郊外の場合、物件価格が購入時を上回って売却できることはほとんどありません。土地が値上がりする可能性が少ないからです。不動産はこうした価格変動のリスクにさらされています。

不動産投資へのモチベーションがあがらない

節税目的の不動産投資は、不動産で儲けようという積極的な理由がありません。むしろ財産を保全したい、税金を取られたくないという後ろ向きの理由がメインです。こうした後ろ向きの投資はどうしてもモチベーションがあがりません。物件に適切な修繕や投資も行わない場合もあります。空室があっても募集は管理会社任せです。主体的に投資にかかわらないと不動産投資は成功しません。

不動産投資の知識ない節税は危険

郊外にいくとそれほど人口の多くない場所にも木造のアパートが立っていることがあります。あのアパートの多くは節税対策の収益物件です。賃貸物件は相続税の評価額が下がり、また融資を受けているとその分相続財産が少なくなります。きちんと収支計算や将来予測をしたうえでの不動産投資なら問題ありません。危険なのは不動産業者に「節税になるから」といって建てた物件です。知識のない不動産投資は危険ですし、相続税は少なくなるものの、将来稼働率が下がるリスクもあります。一括借り上げも期間中賃料が一定ではありません。こうした不動産投資のリスクを知らないまま安易に投資するのは危険です。

 

まとめ

不動産投資をすると確かに節税になる場合があります。相続税をはじめ税制が現金よりも不動産の評価を小さくみている以上、仕方のないことです。ですが、不動産投資をしていて結果的に節税になるならまだしも、節税を目的として不動産投資をするのは、リスクが高い行為といえます。これまで見てきたように、不動産投資を安易に節税対策には使わない方がよいでしょう。