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不動産投資分析に必要なGPIって何だ?

不動産投資物件の取得や維持、そして処分については正確な収支分析が不可欠です。分析がきちんとできていれば、物件の状態の把握は容易になります。ただし、投資分析の用語はCFTやNOIといった英語由来の略称が多いのも事実。中には難解なものもあります。ここではGPIをはじめとして、不動産投資分析に必要な用語について勉強していきましょう。

 

GPIって何だ?

まずはGPIの理解からはじめましょう。GPIは後で説明するキャッシュフローツリーで最初に出てくる用語です。GPIを知らなければ不動産投資分析のスタートからつまずいてしまいます。まずはGPIの説明からです。

総潜在賃料収入のこと

GPIとは「Gross Potential Income」を略した用語です。日本語に直すと「総潜在賃料収入」。つまり、その物件が最大稼働した場合の賃料収入のことです。空室や未回収損といったマイナス要因は考慮しません。計算式としては、賃料×部屋数×12ヶ月が最も基本的なものとなります。この他、加算するものは礼金などの収益がある場合です。

GPIの必要性

空室や未回収損は当然発生するのに、それを考慮しないGPI。その必要性がどこにあるかというと、それは投資分析を行う際には最大稼働した状態を想定することが不動産分析のスタートラインになるからです。部屋数の多い物件や人気のない物件では空室はどうしても発生してしまいます。そんな物件でもGPIを判断し、そこから分析を始めるのです。それを分析するのがCFT分析、キャッシュフローツリー分析となります。

 

CFT分析って何だ?

キャッシュフローツリー分析、略してCFT分析と聞いてもピンとこないこともあります。このCFT分析は簡便でわかりやすい分析方法です。CFT分析では、難しい計算式や複雑な計算はしません。基本的には足し算と引き算で行なうものです。この、比較的簡単にできるCFT分析の概要と必要性についてみていきましょう。

キャッシュフローツリーとは

キャッシュフローツリーのうち、ツリーの部分はTree、すなわち「木」のことです。木は幹、大枝、小枝、葉っぱなどで構成されています。大きな幹から分析を始めて最終的に細かい葉っぱまでを分析する。これがCFT分析の基本的な仕組みです。ここで言う幹とは、先ほどのGPI、葉っぱとは最終的に手元に残る現金、すなわちキャッシュフローのことです。

CFTの必要性

会社などが利用する会計帳簿のひとつに損益計算書というものがあります。会社の売上から材料費や人件費、家賃などを引いていって最終的な利益を計算するものです。利益を計算するにはこうした方法が欠かせません。CFT分析と損益計算書は同じような考え方からできています。最終的に手元に残る利益、それを計算するためにもCFT分析はどうしても必要なのです。

 

CFTの構造

CFTは基本的には各項目を増減させてして分析していきます。まず先ほどお話ししたGPIはCFTの最も上段に位置します。GPIから空室損や未回収損を控除したものがEGI。IGIから管理運営費を控除したものがNOIという具合です。それではCFTで分析される各項目をみていきましょう。

【CFTの一例】

項目

数値

GPI

100

空室・未回収損

10

EGI(GPI-空室・未回収損)

90

管理運営費

20

NOI(EGI-管理運営費)

70

ADS

40

キャッシュフロー(NOI-ADS)

30

空室・未回収損

物件を運営する以上、空室が発生する可能性は否定できません。部屋数の多い物件ならある程度の空室が発生するものです。また、家賃の滞納などで未回収となる金銭もあります。こうした空室や未回収損はCFTではGPIから控除するのです。空室率はこれまでの実績から割り出すことができます。購入前であれば、仲介業者を通じて現所有者に確認しましょう。

EGI

空室損や未回収損、家賃の値引きなどを引いた金額がEGIです。EGIとは「Effective Gross Income」と呼ばれ、日本語では「実効総収入」となります。EGIは、実際にその物件が稼いでくれる収入のことです。空室損などは控除済みなので現実的な数字といえます。企業の収入でいえば「年商」です。

管理運営費

物件を運営するには多くの経費がかかります。代表的なものは税金、保険料、修繕費、管理会社への委託費、不動産会社への広告費、共用部分の備品代、事務費用などです。これらは「管理運営費」と呼ばれます。簡易な査定では、収入に対する経費割合などで査定されることもあるもの。詳細に分析するのであれば、過去にかかった経費情報の収集が欠かせません。

NOI

EGIから「管理運営費」を引いた金額がNOIです。NOIは「Net Operating Income」の頭文字となっています。日本語では「償却前営業利益」のことです。つまり、NOIはその物件から得られる儲けを表しています。企業でいえば、営業利益です。EGIが同じであっても、管理運営費が変わればNOIの数値は変動します。当然ながら、NOIは物件によって異なるのです。

ADS

物件を取得する際に、ローンを利用する投資家も多いもの。当然毎期返済が発生します。そのローン返済も投資分析には組み込むのです。それがADS。ADSは「Annual Debt Service」の略で、日本語では年間ローン返済額となります。ローン返済がNOIを圧迫していては健全な不動産投資とはいえません。このため、ADSをも考慮にいれた分析が必要なのです。

キャッシュフロー

NOIからADSを引いた数値が、1年間のキャッシュフローです。キャッシュフローは手元に残る現金を意味しています。ここまで分析してはじめて、自分の利益がわかるのです。ただし、個人の所得税はまだ控除されていません。いわば簿記でいう「税引前当期純利益」となります。この点は注意が必要です。

 

GPIの注意点

投資分析にGPIを設定することが重要であることをお話ししてきました。ここでは、GPIを設定する際の注意点について解説します。ひとつの物件に対してGPIは不変ではありません。その取り巻く環境や物件の状態に応じて変動していきます。期をまたいで分析する際には注意が必要です。

GPIは毎年下がる傾向

まず、GPIは毎年下がっていく傾向にあります。これは物件の劣化が進んでいくからです。物件の劣化が進むと、賃料を下げざるをえません。また、物理的な劣化が進んでいなくとも、築年数によって賃料は下がっていきます。入居者が最初に確認するのは、賃料と物件の築年数です。築年数が経過していると、賃料が安くないと入居者が集まりません。築年数に連れてGPIは低下することを覚えておきましょう。

GPIの低下を防ぐには

GPIを低下させない方策もあります。それは好立地の物件を購入することです。駅前などの人気の場所は築年数が少々経過していても、賃料は下がりにくくなります。反対に競争が激しい場所や人気のない場所は賃料が下がりやすいもの。投資物件のサイトや賃貸物件のサイトで調べると、どのあたりの家賃が下がりやすく、反対にどこの物件が家賃が下がりにくいかは見つけることができます。物件の購入段階からGPIの低下のことも考えておきましょう。

GPIを上昇させるには

GPIは毎年低下するとお話ししましたが、GPIを上昇させる手段もあります。それは賃料を上げるようなことを行うのです。一例がリノベーションです。間取りを根本から変更し、住宅設備も一新すればGPIを回復させることができます。もちろん、投資する資金と回復するGPIとの兼ね合いには気を付けることが必要です。

 

まとめ

CFTによる分析は不動産投資の基本的な分析のひとつです。CFTは机上の分析であるため、数字を操作すれば良好な結果に簡単にすることができます。ですがそれではその分析に意味はありません。各数字には客観的に説明できる数値を採用すべきです。そうした根拠ある数値を採用したうえで分析を進めていきましょう。