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不動産投資における雑費に上限はあるのか?

不動産投資を行なっている人は、毎年、確定申告をする必要があります。確定申告の際に、経費として計上できるものを明確にした収支報告書があります。経費の中で気をつけない項目が「雑費」です。雑費があまりに多すぎると、税務署から問い合わせを受けるケースもあるため、慎重に考えなければなりません。そこで本記事では、雑費として扱えるものの種類や確定申告の注意点を解説します。

 

雑費とは

雑費とは、名称の通り何にも属さない経費のことです。不動産取得費など、他の勘定科目と比べて、内容がわかりにくく、何を計上して良いのか、わからない人も多いでしょう。

雑費として計上できるものには、以下の種類があります。

交通費

賃貸物件の内覧や確認のためにかかった電車賃やバス代、高速代

通信費

管理会社と連絡のための電話や書類の発送代金など

新聞図書費

賃貸経営のため参考にしたい情報を得るため、書籍や有料webを購入した費用、セミナー参加費

消耗品費

賃貸物件の管理の為に購入したデジカメやPC、必要に応じて購入した 消耗品費用(10万円以上だと減価償却費)

交際費

管理会社と打ち合わせをした際にかかった飲食代や手土産代

これらすべてを足し合わせた金額が、年間の雑費であり、確定申告の対象となります。ここで計上する雑費はもちろん、賃貸経営にかかった費用でないと計上できません。たとえば自分の食事代や交通費などは対象外ですので、混同しないようにしましょう。また、確定申告の際に尋ねられても根拠を示せるよう、交通費や交際費などの領収書は必ずとっておくようにしてください。この中で交通費と通信費は個人的な用事でも使うことがあるもの。このため、その全額を計上しても認められない場合があります。この点には注意が必要です。

 

雑費に上限はあるのか?

ところで雑費に上限があるのか、気になる人も多いでしょう。「年間いくらまでは可能」という明確な決まりはありませんが、一戸マンションで1カ月あたり2万円、年間で25万円程度が大体の相場になっています。あくまで相場なので、建物によってはこれ以上かかるケースもありますが、雑費をあまりに高く計上していると税務署に疑われる危険があります。また、他の勘定科目と比較して、雑費の割合が大きすぎる場合も要注意です。理想としては、すべての勘定科目の中で、雑費がもっとも少なくなるよう調整すべきです。ただし、認められるかどうかはケースバイケースなときもあり、判断が難しい経費もあるでしょう。雑費を必要以上に低くしたために、節税効果が得られないようになるのは避けたいため、詳しくは税理士に相談することをおすすめします。

 

経費として扱えるかどうか判断が難しいもの

雑費に限らず、そもそも経費として扱ってよいのか、判断が難しいものもあります。例えば工事費や修繕費です。こうした判断は一義的には納税者側で判断することになりますが、税理士や税務署に確認することもできます。こうした事例や注意点をいくつか紹介します。

工事費の取り扱い

まずは工事費です。工事の内容が、修繕費であるか、資本的支出であるかによって、取り扱いが変わってきます。修繕費は経費扱いですが、資本的支出の場合、国税庁が定める耐用年数をもとに、減価償却費として計上するため、支出があった年の経費として一括で計上することはできません。一般的な修繕や賃借人の退去に伴う原状回復費用などは一括して工事費に含めることができます。

資本的支出と修繕費の見極め

この資本的支出と修繕費の見極めが難しいとされています。資本的支出は、設備機器などをリニューアルした場合、修繕費は単純に修繕した場合が該当しますが、リニューアルと修繕の区別が曖昧で、工事のプロでないと判断がつきにくいケースがあります。実際の工事の事例や契約内容などをよく見て、どちらに該当するのか、自分なりに把握しておく必要があるでしょう。また、20万円未満の支出や、3年周期以内におさまる程度の支出は、資本的支出であっても経費として一括計上できます。

交通費の注意点

交通費の用途としては「物件を見学する」、「調査のために宿泊する」、「不動産経営セミナーに参加する」が主な項目です。旅費交通費として計上できる費用は、バス代、タクシー代、電車代などの運賃、ガソリン代、駐車場代、高速道路利用代のような車両に関する費用、旅費や宿泊代などになります。これらはもちろん、不動産投資に直接関連する経費であることが前提です。個人的な旅行や移動で発生した交通費はこれらに含めてはいけません。

通信費の注意点

通信費としては通話料、インターネット通信料、書類発送料などが含まれます。通信費の経理処理で問題となるのは、個人使用と業務用の区別が難しいことです。例えばスマートフォン。個人使用でネット上のサイトを見ているところに不動産業者から電話がかかってくる、ということは日常的にあります。こうした場合、個人的に使用した分と業務で使用した分を、割合を決めて費用に計上するのです。これを事業按分といいます。

新聞図書費の注意点

新聞図書費には書籍代やセミナーの参加費が含まれます。経費として計上するには、領収書が必要です。書籍代やセミナー参加費は通常領収書が発行されるため、この点は問題ありません。

交際費の注意点

交際費というと、接待での飲食費や打ち合わせ時のお茶代などが含まれます。不動産投資で接待というのはあまり多くありません。例えば、税理士や管理会社との打ち合わせ時に支払った飲食費が該当します。また、不動産投資家同士での情報交換をしたときなどの飲食時も交際費です。当然ながら、自分や家族の通常の食事代は含めることはできません。税務署も不明瞭な交際費には目を光らせています。乱用は慎みましょう。

 

雑費を計上するためには

雑費とは雑多な費用のこと。だから他の経費に入らないものはどんどん計上すればいい。そんな風に安易に考える人もいます。ですが、雑費は際限なく計上できるものではありません。ここでは雑費を計上するための留意点をみていきましょう。

雑費はできるだけ少なく

科目で迷ったら雑費、という人もいますが、それはあまり上手なやり方ではありません。用途が不明確な費用とみなされることもあります。金額が大きくなると、使途不明な費用として税務署からも指摘されてしまうのです。先ほどお話しした上限も含め、高額な支出は計上せずに雑費はできるだけ少なくするのがよいでしょう。

計上は不動産投資に関するもののみ

通信費などは事業用と個人使用で分けることが必要であることをお話ししました。事業按分も必要です。計上できる部分は不動産投資に関して支出した部分のみとなっています。不明瞭な支出は税務署からの指摘対象となる可能性もあります。そうした事態に備えて、領収書はもちろん、資料を保管して説明できるようにしておきましょう。

 

まとめ

以上、不動産投資における雑費の解説をしてきました。経費として計上できる金額が増えれば、節税効果に繋がるので、雑費として認められるものはできるだけ計上しておきたいところです。一方で、本来認められないものまで雑費として計上し、税務署から指摘を受けるような事態は避けなければなりません。自分で勉強しておくのはもちろんのこと、判断が難しい時は担当の税理士へ相談するのが確実です。本記事が不動産投資を始める方の一助になれば幸いです。